会員ランク制度とは
会員ランク制度とは、顧客ランク制度とも呼ばれ、店舗やサービスの利用状況に応じて顧客をランク分けをするマーケティング施策です。 例えば、顧客の来店回数や購入金額に応じて「レギュラー」「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」などに区分し、ランクに応じて割引率や特典を設定します。
会員ランクがもたらす効果
会員ランク制度は、以下のような効果をもたらします。
(1)顧客満足度向上
顧客は、店舗やサービスを利用すればするほど、ランクが上がります。もともと好んで利用している場合は、利用するだけでお得になるので喜んでもらえます。また、特典や仕組みを工夫すれば、次のランクアップに向けてゲーム感覚で楽しんでもらうこともできるでしょう。結果として、顧客満足度の向上にもつながります。
(2)リピーターの獲得で顧客の囲い込み効果
会員ランク制度は、リピーターの獲得にもつながります。もし、2つの店で同じものを販売しているとしたら、もうすぐランクアップできる店を選びたいと考える顧客は多いでしょう。ランクアップ制度がリピーターの獲得に効果を発揮するのは、「お得に利用したい」「ステータスを感じたい」という顧客心理を上手く活用できるからです。リピーターだからこそ受けられるサービスを設定すれば、顧客に「たくさん利用したからこそ特典が受けられる」「この店の特別な客である」という意識をもたれるようになります。顧客に満足感や特別感を与えられ、結果的に顧客の囲い込みにつながるはずです。
(3)ロイヤルカスタマーの育成
ロイヤルカスタマーとは、特定の企業・店舗・サービスなどに対する「忠誠心(ロイヤリティ)」が高い顧客です。 ランクアップを活用することで、企業や商品に対する愛着心や好感度を育てることができます。一定ランク以上の顧客には「特別席」「プレゼント」「ポイント還元率」など、ロイヤルカスタマーにならないと受けられないサービスを準備するのが効果的です。ロイヤルカスタマーならではの「特別感」を用意することで、まだ特別なランクに達していない顧客にも、目標をもって楽しみながら利用してもらえるようになります。
ECサイトにも会員ランクはおすすめ
会員ランク制度は、実店舗だけではなくECサイトにも向いています。ECサイトにおいて、リピーターは成長に欠かせない存在です。ECサイトを利用する回数や購入金額に応じてランクアップできれば、顧客はお得な特典を得るために繰り返しサイトを利用します。ランクが上がることで顧客満足度が向上するだけではなく、「獲得できるはずの特典を逃したくない」という心理が働き、リピーターの獲得につながるでしょう。
会員ランク制度のメリット
会員ランク制度は、店舗側だけではなく消費者側にもメリットをもたらします。両者の立場から、それぞれのメリットをチェックしてみましょう。
店舗のメリット
店舗側のメリットは以下のとおりです。
(1)顧客単価アップ
「ランクを上げたらお得になる」という心理が働くと、消費者は必要以上の買い物をしてしまう傾向があります。例えば、店舗側が「1万円の購入金額でランクアップ」という条件を消費者に提示するとしましょう。本当は9,000円分しか買う必要がなくても、顧客はランクアップのために、1つ商品をプラスして購入することがあります。結果的に、顧客単価がアップし、店舗側のメリットになります。
(2)安定的な売上獲得
売上には、リピーターの存在が欠かせません。マーケティング戦略のひとつに「2:8の法則」とも呼ばれる「パレートの法則」があります。パレートの法則とは「顧客全体の2割の優良客が売上の8割を占めている」という定説です。パレートの法則を参考にした場合、安定的な売上を獲得するには、2割のリピーターを確保することになります。リピーター獲得に効果的な「会員ランク制度」を利用すれば、安定した売上の確保につながるでしょう。
(3)顧客の囲い込み
先にもご紹介したとおり、リピーターを獲得できる会員ランク制度は、顧客の囲い込みに効果があります。「ここまできたらランクを落としたくない」「もう少しでランクアップする」などの心理が働くと、取りこぼした情報がないかどうかを確認するため、店舗情報をチェックする頻度が高まる傾向があります。その結果、店舗と消費者との接点が増えて関係が維持しやすくなります。ロイヤルカスタマーの育成がしやすくなるため、顧客の囲い込みにもつながるでしょう。
(4)効率的な販促
消費者をあらかじめランク別に区分できているため、特定のランクに特化した販促が実施できます。強化したい会員ランクに絞った施策を行うことで、無駄な費用を抑えられるでしょう。
消費者のメリット
消費者側のメリットは以下のとおりです。
(1)お得な特典・優待を受けられる
消費者は、店舗を利用すればするほど、ランクが上がります。ランクが上がることによって、割引やポイントの獲得などの優待特典が受けられます。
(2)会員ステージ、購買の記録が一目でわかる
消費者は、会員ページなどで会員ステージや購買の記録の確認が可能です。「あと○○円でシルバーランク」などの表示があれば、現時点で自分がいくら使ったかがわかり、ランクアップのための必要額も確認できます。購入履歴を確認できれば、利用額の管理にも役立つでしょう。
会員ランクを導入する際のポイント
会員ランクを導入する際は、ターゲット層のニーズに合った特典を準備するのがポイントです。例えば、ランクアップの特典が「高額商品の送料無料」を特典にしても、高額商品を購入するのが難しい学生などのターゲット層には響きません。また、特典が「ポイント還元率アップ」だった場合、主に現金で購入する高齢者には、魅力が伝わりにくいでしょう。特典は、ターゲット層の特徴を熟知したうえで準備しましょう。
また、会員ランクがダウンしてしまった場合、消費者のモチベーションが下がる可能性があります。ランクを維持するための条件が高すぎないかも、あらかじめ注意するポイントです。
会員ランク制度(機能)の使い方
業種によって、会員ランク制度(機能)の使い方が工夫できます。例えば飲食の場合では、シルバーランクは「飲み物1杯無料」、ゴールドランクは「デザートが1品無料」など、販売品である飲食物を利用した優待が可能です。
中食の場合は、会員ランクに応じてポイントを付与する方法があります。例えば、1ポイントを1円とした場合、シルバーランクは「100円で2ポイント」贈呈するのに対し、ゴールドランクは「100円で5ポイント」贈呈するという方法です。
コスメなどをECサイトで販売する場合は、サンプルをきっかけに新たな購買を狙う方法があります。例えば、シルバーランクは「試供品1品」なのに対して、ゴールドランクは「試供品3品」を選択できるという方法です。顧客側はランクが上がるにつれてさまざまな商品を無料で試せるメリットがあり、店舗側は新たな購買につなげられるというメリットがあります。
会員特典の事例
会員特典には、さまざまなパターンがあります。こちらでは、実際に会員特典を提供している3つの事例をご紹介しましょう。
(1)いきなり!ステーキ
ステーキ専門の飲食店チェーン「いきなり!ステーキ」では、顧客が食べた肉の重量で、会員をランク分けしています。ランクは「ホワイト」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」「ダイヤモンド」の5種類です。ランクによって食事特典、誕生日特典、ドリンク特典などが設けられています。
2019年には、会員ランクアップの条件として、食べた肉の重量から食事回数へと変更しましたが、多くのユーザーからの声を受け、2023年1月からは重量へのランクアップに戻ったという経緯が話題になりました。改定後はライトユーザーにも配慮し、少ない来店回数でも特典を受けやすいシステムになっています。
(2)SHOP LIST
アパレルショッピングサイトの「SHOP LIST」では、購買価格によって「レギュラー会員」「シルバー会員」「ゴールド会員」「プラチナ会員」の4ランクを設定しています。ランク別にポイントの付与率や特典が設定され、特別感のある「ランクごとの特別イベント」を開催することもあります。
(3)ANA.Japan
航空会社「ANA.Japan」では、マイルとは別に、プレミアムメンバーの認定を目的としたプレミアムポイントがあります。メンバーの種類は「ブロンズ」「プレミアム」「ダイヤモンド」の3種類があり、1年間に獲得したポイント数によって翌年度のステータスが決定する仕組みです。ランクに応じて、ラウンジやコンシェルジュサービスの利用、座席クラスのアップグレードなど、さまざまな特典が利用できます。
まとめ
リピート客の獲得や顧客の囲い込みに効果的な「会員ランク制度」について解説しました。会員ランク制度は店側のメリットだけではなく、顧客満足度のアップにもつながります。特典の設定方法や制度の使い方や、さまざまな業種の事例についてもご紹介したので、ぜひ参考にしてください。