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CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?成功事例や具体的な手順も解説

CXとは

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CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?

CXとは「カスタマーエクスペリエンス」の略語で、2000年頃から注目され始めた経営戦略やマーケティングのコンセプトです。日本語では「顧客体験」「顧客体験価値」などと表します。近年のデジタル社会においては、DCX(デジタルカスタマーエクスペリエンス)という言葉も生まれており、主にWebサイトやモバイルアプリなどデジタルプラットフォーム上での顧客との対話や取引を指しています。CXは、顧客が商品・サービスと接触し、興味を持った時点から購入して利用し続けるまでの企業との全ての接点(タッチポイント)において、顧客が体験する「楽しさ」「快適さ」「驚き」などの付加価値を表します。

従来は、商品・サービスの機能や性能、価格などの合理的な価値が重視されてきました。しかし、CXは合理的な価値だけでなく、感情的な価値として、購入してから購入後のフォローアップまでの全てにおける体験を重視しています。CXを向上させるためには、顧客が知りたいと思う情報を最適なタイミングで届け、顧客とコミュニケーションを取ることが大切です。

CXが重要視されている理由

CXが多くの企業に重要視されるようになったのは、以下のような理由が挙げられます。

商品・サービスの差別化が難しい

日本ではあらゆる技術が発達し、市場の成熟化が進んでいます。そのため、商品・サービスが溢れており、機能性や価格面だけでは差別化が難しくなっているのが現状です。今まで価値があったとされる機能・性能・価格などの「合理的な価値」だけでは生き残れなくなりました。そのため、CXを取り入れ、合理的な価値にプラスして、全てのフェーズにおいて顧客満足度を高め、感情的な価値を提供することで差別化を図るようになっています。

例えば、レストランに来店した際、料理の味以外の感情的な価値といえば、店内の清潔感や、外観や内装のお洒落さ、店員の接客、そのお店ならではの演出が挙げられます。同じジャンルの料理を提供する他店舗との差別化を図ることが重要です。

顧客接点の増加と複雑化

顧客接点の増加と複雑化も、CXが重要視されるようになった理由のひとつです。以前は、店舗販売と通信販売など、顧客の購買ルートがある程度限定されており、顧客との主な接点は店頭・電話・メールなどでした。しかし、現在はインターネットの普及に伴い、SNSやネットショップなど顧客接点の選択肢が多様化しています。店頭・電話・メールなど、今までの接点のみに留まっていては、顧客を逃してしまうかもしれません。そこで、企業が多様な接点を活用し、購入のしやすさや問い合わせのしやすさなど顧客にそれぞれの接点でストレスのない対応をすることで、新たな価値を提供できると考えられるようになりました。

「モノ」から「コト」への変化

合理的な価値だけで他社との差別化が図れなくなった現代においては、「どのような手段で手に入れたか」「どのようなサービスを受けられたか」などの「体験価値」が求められるようになりました。飲食店を例に取ると、以前は店舗に行って食べるのが当たり前でした。しかし、今ではテイクアウトやデリバリーなど、食べる「モノ」は同じであっても、体験が異なっています。「モノ」である商品・サービスが以前と同じであっても、「コト」である店内飲食、テイクアウト、デリバリーなどの体験が変化すると、従来のやり方やサービスでは顧客が満足してくれない可能性もあるでしょう。「顧客がどのような体験をすれば、価値を感じてくれるか」という課題が現れたため、企業はCXを重要視し始めているのです。

UX(ユーザエクスペリエンス)との違い


CXとは1

CXと似たような言葉にUXがあります。UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、自社の商品・サービスを利用したときに得られる体験です。UXは単一の商品・サービスなどが対象であるのに対して、CXは購入前から購入後までに顧客が体験する全ての要素が対象となります。CXは、UXが積み重なったものと考えると分かりやすいでしょう。また、UXは主に取引がある顧客(ユーザー)が対象ですが、CXは取引に関わらず全ての顧客が対象となるという違いもあります。

CXとOne to Oneマーケティングについて

CXを向上させるには、顧客一人ひとりとの関係構築が大切です。顧客が自社の商品やサービスと出会ってから購入した後の体験を顧客にとって良いものにすることが求められます。

(1) One to Oneマーケティングとは

One to Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりの嗜好やニーズに合わせてパーソナライズされたアプローチを取るマーケティング手法のことです。顧客へのアプローチは、行動履歴や属性情報といったデータベースが基になります。そのため、顧客との接点の中で、属性情報や行動情報を収集・蓄積していく仕組みが必須です。

(2) CXとの関係性

One to Oneマーケティングによって提供される価値によって、CXは向上します。より良い顧客体験の提供が、商品やサービスの購買に繋がります。

例えば、One to Oneマーケティングの施策の一つであるメルマガ送付で、商品の購入を検討している顧客に対して、タイムリーなクーポンを届けると、顧客は購買意欲が高まります。このように、顧客の属性や行動条件、情報ニーズに対して適切なアプローチを図ることで、CXが向上し、全体としてのマーケティング活動が促進されます。

CX向上に取り組むメリット

CXとは2
企業がCX向上に取り組むことで得られる主なメリットは、以下のとおりです。

ロイヤルカスタマー・リピーターの獲得

顧客にとって満足のいく価値が提供できるようになれば、ロイヤルカスタマーリピーターの獲得につなげやすくなります。ロイヤルカスタマーとは「企業・ブランドに信頼を寄せてくれる顧客」を指し、売上貢献度が高いのが特徴です。ロイヤルカスタマーやリピーターに「この企業の商品をまた使いたい」「この企業の別の商品も買ってみたい」と感じてもらうことで、売上の安定化も期待できます。

顧客離れの抑制

商品やサービスの質が変わらなかったり低下したりする場合には、ユーザーがほかの企業・ブランドに乗り換える可能性があります。企業は顧客を1人失うと、顧客の生涯価値(LTV)を失ったことになるため、顧客の損失は長期的に見ても企業にとって大きな打撃になります。同時に、顧客が離反したということは、その顧客が他社に乗り換えてたということを指すため、競合他社に予断を許していることにもなります。CXの向上を図ることで、顧客満足度も高まり、顧客離れの抑制につながります。

「LTV」って何?マーケティングにおけるLTVの重要性をご紹介!

競合との差別化

商品・サービスの機能性や価格で差別化を図れなくなった現在では、CXの向上が自社商品・サービスのブランディングにもつながり、他社との差別化にも大きな影響を及ぼします。また、近年はインターネットが普及し、顧客自身が情報収集を行って商品・サービスを比較検討できるようになりました。競合他社との差別化を意識し、顧客にもわかりやすい明確な違いを提供することで、売上の安定・向上にもつながります。

クチコミ効果

近年は、多くの人が自由にSNSで情報発信するようになっています。CXを提供し続けることで顧客ロイヤリティを向上することができます。顧客ロイヤリティが高い顧客は、情報を自ら周りに発信するようになります。SNSを見て「自分も欲しい」「真似してみたい」など、良い評判が広まれば、多くの人に自社商品・サービスを認知してもらえます。

CXを向上させる具体的な手順

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CXを向上させるためには、以下のような手順で時系列に沿って施策を行うのが近道です。

(1)現状を分析

まずは、現時点で顧客にどのように思われているのかを把握します。「顧客に直接ヒアリングを行う」「アンケートを取る」などの方法で、商品・サービスに対する評価を集めましょう。評価の対象となる顧客は、未顧客・現顧客・過去顧客を含む全ての顧客です。例えば、未顧客に対しては「何が購入の決定要因になるか」「どの企業と比較しているか」などの購入因子を探ります。現顧客に対しては「現在に何に満足しているか」「何が不満と感じるか」などの継続因子を探ってみましょう。過去顧客には「購入を止めた理由・事情」など、離反因子を探ります。顧客の属性ごとに、アプローチの仕方を変えるのがポイントです。

(2)企業のあるべき姿・方向性を再検討

現状が把握できたら、次は「顧客にどのように思われたいのか」という企業のあるべき姿・方向性を再検討します。例えば、自社の強みや弱みを洗い出したり、「価格」「品質」「ラインアップ」「提供スピード」などに評価の程度を分類したりして、何を改善すべきかを決めていきます。

(3)改善策を実施し顧客の再評価を得る

再検討した改善策に取り組んだら、あらためて顧客に評価をしてもらいましょう。(1)の手順と同様の方法で、顧客からの評価を集めます。再評価を受ける際のポイントは、顧客が自社商品・サービスの何を評価していたのかを探ることも大切です。再評価の結果によって、活動の継続・中止を判断します。

CX向上に関連する注目ワード

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CX向上を目指す際は、関連するワードを知っておくことも大切です。こちらでは、CX向上に関連する4つの注目ワードについてくわしく解説します。

ミッションステートメント

ミッションステートメントとは、企業や従業員が共有すべき価値観や行動指針などを文章にしたものです。顧客体験に対する企業の姿勢を従業員に理解してもらえなければ、目標に掲げても従業員の認識がそれぞれ異なるため、目標到達が難しくなるでしょう。ミッションステートメントを作成し、企業と従業員が共通認識をもつことで、企業全体として商品・サービスの価値を高められます。また、ミッションステートメントを顧客に知ってもらうことで、信頼を得られるようになり、自社のファンになってもらうこともできるでしょう。

カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップは、顧客が商品・サービスの購入までにどのような行動を行ったのかを明確にしたものです。フェーズごとに顧客接点や顧客の関心事などを洗い出し、顧客体験が可視化できます。顧客の動きを追うことによって顧客ニーズや購買心理が理解できるようになれば、適切なタイミングでアプローチできるでしょう。

ペルソナ

カスタマージャーニーマップを作るのに欠かせないのがペルソナの設定です。ペルソナとは、行動を起こしてほしい個人ターゲットを具体的にイメージした人物像です。しかし「このような人に購入してほしい」というような、企業側にとって都合の良い人物像ではうまくいきません。現実的に考えたメインターゲットとなり得る顧客の代表となるような人物像を設定することが大切です。ペルソナが明確になると、カスタマージャーニーマップを作成する際も「どのような方法で情報収集するだろうか?」「どのように行動するだろうか?」「どのような感情を抱くだろうか?」などの顧客体験の流れがリアルにイメージできます。

ネットプロモータースコア

ネットプロモータースコアとは「NPS」ともいい、顧客ロイヤルティを数値化できる指標として世界中で利用されています。顧客に「自分と近い人に商品を勧めるかどうか」という質問をし、以下の0~10点のスコアで顧客を分類して、顧客ロイヤルティの度合いを表します。NPSのスコアは、推奨者の割合から批判者の割合を引いたものです。

推奨者の割合(%)- 批判者の割合(%)= NPS
 
推奨者は、ロイヤルティの高い顧客という見方もできます。ネットプロモータースコアは、企業の収益性・業績・成長率にも相関関係があることが調査結果から証明されています。

スコアの点数 顧客の分類
0~6点 批判者
7~8点 中立者
9~10点 推奨者

NPSについてはこちらの記事でも紹介しています。

成功事例を紹介

CXの重要性は、多くの企業が認識しています。実際にCX向上に取り組むことで、自社製品のブランド化に成功した企業や、安定した顧客の確保ができるようになった企業が多数存在します。こちらでは、CX向上に成功した3社の事例をご紹介します。

(1)スターバックスコーヒージャパン株式会社

スターバックスでは、全てのお客さまに対して最高のスターバックス体験を提供できるような行動規範を定めており「Our Mission and Values」としてホームページに掲載しています。商品を提供するだけではなく居心地の良さを体験してもらうことを「スターバックス体験」とし、スタッフの接客をはじめ、心地良いBGMやコーヒーの香りで居心地が良いと感じられるような体験を提供しています。また、インターネットも無料で利用可能ということもあり、顧客は快適な時間を過ごせます。家でも職場でもない居心地の良い場所「サードプレイス(第三の場所)」として、コーヒーを飲むだけでなく「くつろぐ」「勉強する」「打ち合わせ」のためにスターバックスを利用する顧客も多いようです。来店することで得られる「スターバックス体験」を通じて顧客獲得に成功しています。特別な空間で過ごしたいと思っている顧客にとっては、スターバックスに行くこと自体がステータスにもなっています。

(2)東京ガス株式会社

東京ガスでは、エネルギーの小売自由化をきっかけに、顧客に選ばれる会社を目指すという目標を掲げました。そこで、Webサイトを活用した顧客エンゲージメント強化に取り組み、ポータルサイト「myTOKYOGAS」をリニューアルすることで、会員数を6倍以上に増加させています。会員の属性に応じたコンテンツ提供やキャンペーンなどを行い、顧客に寄り添った戦略を実施したのです。ポータルサイトのリニューアルによって、CXの向上が実現しています。

(3)ソニー損害保険株式会社

ソニー損保が取り組んでいるのは、企業に対する信頼度数値(NPS)を向上させるための活動です。そのために「お客様からの声」をホームページ上で掲載しています。顧客からの良い声ばかりを掲載するのではなく、自社にとって都合が悪い顧客の声も掲載しているのが特徴です。ありのままの声を掲載し、どのように反映・改善したかを公開しています。本当のソニー損保を知ってもらい、顧客に判断してもらうことで信頼関係を構築するという取り組みです。自社の利益ばかりを追求するのではなく、顧客の利益を優先させたことで、ダイレクト自動車保険20年連続売上1位という結果につながっています。

まとめ

CXとは5
近年は多くの企業が、商品・サービスの機能や性能、価格などの合理的な価値だけでなく、感情的な価値としてCXを重視しています。今回は、CXのメリットをはじめ、具体的な手順や取り組みに必要な関連ワード、成功事例について解説しました。CX向上の取り組みを行う際の参考にしてください。

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