キャッシュレス決済とは?
キャッシュレス決済とは、現金を使わずに支払いを行う決済方法です。JCB・Visa・MasterなどのクレジットカードやSuicaやnanacoなどの電子マネー、PayPayや楽天ペイなどのQR・バーコード決済、支払いと同時に自身の銀行口座から引き落としされるデビットカードなど、決済方法も年々増えています。
国が推進するキャッシュレス決済
日本では、政府の取り組みとしてキャッシュレス決済の普及を掲げ、2018年には経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」を提唱しました。経済産業省では、定期的にキャッシュレス決済比率を算出し公表するなどの活動も行っています。
世界と比べて遅れている日本のキャッシュレス決済
経済産業省が2020年1月に発表した「キャッシュレスの現状および意義」によると、日本のキャッシュレス決済比率は、2016年時点で約20%程度に留まっていました。それに比べ、同時点で世界各国ではキャッシュレス決済比率が高くなっており、日本のキャッシュレス決済比率が低いことがわかります。例えば、韓国は96.4%、イギリスは68.6%、中国は65.8%など、高い普及率です。そしてオーストラリアの58.2%、カナダの56.3%、スウェーデンの51.5%、アメリカの46.0%と続きます。このようにキャッシュレス決済が進んでいる世界各国と比べると、日本は半分以下の普及率となっており、世界に比べて遅れていることがわかります。
日本のキャッシュレス決済推進の目標
経済産業省では、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の8割程度まで上昇させることを目指しています。2025年の4月13日~10月13日までは「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」が予定されています。世界各国から多くの人が訪れ、インバウンド消費の拡大が見込まれる2025年までには、キャッシュレス決済の比率を拡大していきたいというのが狙いです。
現在の日本のキャッシュレス決済比率
2022年6月に経済産業省が発表した2021年のキャッシュレス決済比率は、32.5%でした。キャッシュレス決済比率の内訳の推移は、以下のとおりです。キャッシュレス決済手段別では、クレジットカードが断然トップです。しかし、2018年からはコード決済が登場し、全体額に占める割合も徐々に上がっています。例えば、コード決済が決済手段として登場した2018年は、決済手段の割合はほとんどクレジットカードでした。しかし、直近の2021年では、クレジットカードが全体の85%ほどとなり、コード決済が5%ほどまで上昇しています。
決済手段/年 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
クレジットカード | 19.2% | 21.9% | 24.0% | 25.8% | 27.7% |
デビットカード | 0.37% | 0.44% | 0.56% | 0.75% | 0.92% |
電子マネー | 1.7% | 1.8% | 1.9% | 2.1% | 2.0% |
コード決済 | – | 0.05% | 0.31% | 1.1% | 1.8% |
合計 | 21.3% | 24.1% | 26.8% | 29.7% | 32.5% |
キャッシュレス決済のメリット・デメリット
日本でも年々キャッシュレス決済の普及率は上昇しています。キャッシュレス決済によって、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、メリット・デメリットをチェックしてみましょう。
メリット
キャッシュレス決済におけるメリットは以下のとおりです。消費者側、店舗・企業側の目線から解説します。
消費者側
消費者側は現金のやり取りが不要になるため、以下のようなメリットがあります。
- 財布から現金を出す手間が省ける
- 衛生的なやり取りができる
- 大金を持ち歩かなくてもよくなる
- 持ち合わせがなくても支払える
- 現金を引き出す手間や手数料がなくなる
- ポイントを貯められる
- 決済がスピーディーになる
- 支払い履歴を見れば家計の管理がしやすくなる
銀行から現金を引き出す際の手間や手数料がなくなり、紙幣や硬貨を触ることなく決済ができるので、衛生的にも優れています。
店舗・企業側
現金は手放す額が紙幣の数によって可視化されるため、高額な買い物を躊躇してしまう傾向があります。しかし、キャッシュレス決済は、使用した金額が数字で表示されるだけなので、高額決済されやすいという傾向があります。キャッシュレス決済によって、現金で支払うときと比べて客単価が高くなる傾向があるため、店舗・企業側のメリットとなり得るでしょう。
また、キャッシュレス決済は消費者側にさまざまなメリットがあるため、できるだけキャッシュレス決済をしたいという消費者は多いです。手持ちの現金がない場合は、現金をおろす手間や手数料が面倒になってしまい、買い物自体を諦めてしまうケースもあります。できればポイントが付く店舗や企業から買いたいという消費者も多いため、キャッシュレス決済の導入は販売機会の拡大にも繋がります。
さらに、現金払いの場合は従業員に以下のような手間がかかります。
- 現金を受け取る
- 金額をレジに打ち込む
- レジで表示されたお釣りを準備する
- お釣りとレシートを手渡す
キャッシュレス決済にすることによって、これらの作業が削減され、従業員の負担を減らすことが可能になります。スピーディーに会計できるため、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。現金のやり取りが省略される非接触型の決済は、衛生管理の向上にもつながります。
デメリット
キャッシュレス決済には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
消費者側
同じ系列店であっても、店舗によってはキャッシュレス決済が使えないところもあります。キャッシュレス決済ができると思って訪れても現金払いしかできないケースには、消費者側が不満を抱くこともあるでしょう。また、災害などによる停電でキャッシュレス決済が利用できなくなり、いざというときに買い物ができない危険性もあります。先ほど紹介したとおり、キャッシュレス決済は、現金に比べて使用した金額を実感しにくいため、金銭感覚が薄れて意図せず高額決済してしまうリスクもあります。
店舗・企業側
販売機会の拡大や客単価の増加が見込まれるキャッシュレス決済ですが、もともと店舗や企業の客層が現金払いの場合は、メリットが薄れてしまいます。高齢な客層の場合は、キャッシュレス決済の方法がわからず、慣れるまでは従業員の負担も増えてしまうでしょう。災害などが発生した場合は、決済端末が使えなくなるリスクも考えておかなければなりません。さらに、導入初期費用や手数料などのランニングコストがかかり、売上入金に時間がかかる場合もあるため、注意が必要です。
キャッシュレス決済の主な種類
キャッシュレス決済にはさまざまな方法があります。こちらでは、主に利用される決済の特徴について解説します。
クレジットカード
クレジットカードは、消費者にとってなじみ深い決済方法です。クレジットカード会社が利用金額を立て替えておき、消費者は毎月の支払い日にまとめて支払う仕組みになっています。買い物での支払いだけではなく、公共料金の支払いや国民年金保険料や国民健康保険料などの納付など、幅広く利用されている決済方法です。消費者側は、利用額に応じて加算されるポイントやマイレージが貯められるメリットがあります。さらに、レストランやホテルなどの優待プランや旅行傷害保険など、豊富な付帯サービスが受けられる点もメリットです。クレジットカードは高額な買い物にも使われる傾向があり、店舗・企業側にとっては客単価が高くなるという特徴があります。
デビットカード
デビットカードは、利用時に銀行口座から利用金額が引き落とされる決済方法です。クレジットカードのような審査がないため、高校生でも利用できます。日本ではあまり普及していないものの、海外ではクレジットカードと同様に幅広く利用されています。
電子マネー
電子マネーには、現金をチャージして使う「プリペイド型」、即時払いの「デビット型」、クレジットカードと紐づけて後払いする「ポストペイ型」の3タイプの支払い方法がある決済方法です。nanacoやWAONなどの「流通系」、PASMOやSuicaなどの「交通系」など種類も数多くあります。電子マネーは、専用の機器にスマートフォンやICカードをかざせば支払いが完了します。暗証番号を入力するなどの手間がかからないため、気軽に使えるのが特徴です。交通系電子マネーは、各種交通機関の利用や定期券としても利用できます。流通系の電子マネーは、発行元店舗などで割引サービスなどを受けられるなどのメリットがあります。
交通系ICカードとポイントカードを合わせて、地域オリジナルのICカードとして利用している例もあります。
くまモンのICカード>>
エヌタスTカード>>
コード決済(QRコード・バーコード)
QRコード・バーコード決済などのコード決済とは、事前に決済アプリを消費者のスマートフォンにダウンロードして使用する決済方法で、PayPay・楽天ペイ・LINEPayなどが有名です。消費者はあらかじめ、銀行口座やクレジットカードを紐づけて登録します。銀行口座を紐づけた場合は「即時払い制」クレジット紐づけた場合は「後払い制」になります。
(※)QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
ポイント支払い
ポイント支払いとは、複数の企業・店舗が加盟しているTポイントや楽天ポイントなどの「共通ポイント」や店舗や企業が独自に発行する「独自ポイント」を貯めて、会計時に利用する決済方法です。企業は自社製品の購入やサービスの利用に応じてポイントを付与し、消費者はポイントを貯めることによって割引や特典などが受けられます。ポイントの付与は店舗・企業にとって、来店率や購入単価のアップ、新規顧客獲得、顧客の囲い込み、競合他社に対する優位性などのメリットをもたらします。
株式会社トリニティは、複数の共通ポイントを1つの端末で使えるサービスの開発・運用サポートもしています。
キャッシュレス決済の3つの支払い方法
キャッシュレス決済の主な種類がわかったところで、支払い方法についても注目してみましょう。先にもご紹介したとおり、支払い方法には、消費者が先にチャージしておく「前払い制」、決済時に銀行口座から引き落とされる「即時払い制」、決済を行った後にまとめて銀行から引き落とされる「後払い制」の3種類があります。
支払い方法 | キャッシュレス決済の種類 | 特徴 |
前払い制 |
・交通系電子マネ(Suicaなど) |
・消費者が事前にチャージした金額の範囲内で決済を行う |
即時払い制 |
・デビットカード |
・決済時に登録先の銀行口座から決済金額と同額が自動で引き落とされる |
後払い制 |
・クレジットカード |
・決済を行った翌月または翌々月に、一定期間のカード利用金額額がまとめて銀行口座から引き落とされる |
キャッシュレス決済を導入する際のポイント
キャッシュレス決済のメリット・デメリット、種類や支払い方法がわかったところで、導入を検討してみたいと思われる店舗や企業も多いでしょう。こちらでは、実際にキャッシュレス決済を導入する際のポイントや注意点について解説します。
(1)導入する決済手段の選定
キャッシュレス決済にはさまざまな種類があるため、キャッシュレス決済端末を選ぶ際には、決済方法の「利用者数」が多い決済方法を選ぶとよいでしょう。さらに、地域によっても決済方法の利用率は異なります。店舗・企業の客層によっても利用率は異なるため、住民や顧客のニーズを把握した上で、最適な決済手段を選定することが重要です。
(2)キャッシュレス決済の会計処理
キャッシュレス決済を導入する際には、初期費用をはじめ、決済手数料や入金手数料なども発生します。売上発生のタイミングと入金がズレるため、通常とは異なる会計処理が必要です。売上発生のタイミングから実際の入金までの期間は、決済代行会社によって異なります。できるだけ早い入金を希望する場合は、決済から入金までの期間が短い代行会社を選ぶとよいでしょう。売上金入金までの期間が短ければ、資金繰り悪化リスクが抑えられます。ただし、売上発生から入金までのサイクルが早い場合は、預かり金が必要な場合や最低振込金額が設定されている場合があるので、注意が必要です。
(3)契約する決済事業者の選定
決済事業者の選定する際は、システムの機能、決済手数料、セキュリティ性などが重要な選定ポイントになるでしょう。合わせて従業員への研修体制や導入実績があれば万全です。
まとめ
キャッシュレス決済の普及は、政府が掲げる重要な施策です。2025年に向けて、今後ますますの普及が見込まれるでしょう。消費者にとってもメリットが多いため、店舗・企業側にとっても販売機会の拡大や客単価の上昇のほか、顧客満足度やコロナ禍における衛生管理の向上にもつながります。今回は、キャッシュレス決済の種類や支払い方法について詳しく解説しました。導入を検討される際の参考にしてください。