エリアマーケティングについて
今、市場を拡大し、業績向上を目指せる「エリアマーケティング」が注目されています。自社でこの新たな手法を活用するためにも、エリアマーケティングを正しく知ることが大切です。
こちらの記事では、エリアマーケティングの内容や戦略をはじめ、エリアマーケティングに欠かせない商圏分析のポイントについて詳しく解説していきます。
エリアマーケティングとは?
エリアマーケティングとは、エリアを絞ってビジネスを展開するマーケティング手法を意味します。地域密着マーケティングとも呼ばれます。
全国均一の営業戦略を行うのではなく、地域(エリア)の生活様式、交通インフラ、産業、土地柄などを考慮してマーケティングを行う手法・考え方です。収益性を高められる事業の進め方を検討するため、出店エリアの「商圏分析」などを行い、マーケティング戦略を構築していきます。エリアマーケティングを行うことによって、該当エリアで自社が成果を出せるかどうかを見極めることができると考えられています。
エリアマーケティングで重要な商圏分析
まず「商圏」とは、来店が見込まれる顧客の生活範囲を指します。基本的には、店舗を中心として考えた円形の地域です。店舗から顧客が住んでいる場所までの距離を「商圏距離」、商圏内に存在する全人口を「商圏人口」と表します。商圏距離は一律何kmなど、特に厳密には決まっていません。商圏の広さは、業種・業態、地域、取り扱う商品によって異なります。
例えば、日用品や食料品を扱うスーパーやコンビニなどは数が多く、消費者は最寄り以外の店舗に行くことがあまりないことから、商圏が小さいといわれています。逆に、アパレルや高級品などを扱う百貨店などは、少々遠方から足を伸ばしてでも買いに行く傾向が多いため、商圏が広くなります。
商圏内の年齢層や交通機関の発達具合で顧客の行動範囲が左右されるため、若い人が多かったり、交通機関が発達していたりして行動範囲が広くなる場合は、自ずと商圏も広くなります。商圏分析によって、商圏内の店舗周辺の地域特性やボリュームを把握することが可能です。商圏分析を行うことで、ターゲットとニーズを知ることができるため、営業や販売促進の目安になります。
商圏分析のポイント
商圏分析を行う際、特に注意するポイントを以下に紹介します。
(1)商圏内の人口や男女比、世帯の特性を把握する
商圏分析でよく活用されるのは「国勢調査データ」です。国勢調査とは、総務省統計局によって、5年に一度実施する統計調査で、国内の市区町村ごとの人口、世帯の数、年齢別男女比、就業状態、従業地または通学地、住居の種類、住宅の建て方などについて調査を行っています。
国勢調査のデータを使えば、商圏内の人口や男女比、世帯の特性などを把握することが可能です。また、国勢調査や住宅・土地統計調査等から得られるデータをもとに年収ランク別の世帯数を推計した「推計年収データ」を使えば、商圏内の富裕度特性なども把握できます。
商圏内の人口比、年代、富裕度特性などを把握することによって、自社が商圏内でどういった範囲の人を顧客にできるか、どのような品揃えを行っていったらいいかなどの検討材料になります。
(2)マクロ環境を分析し、市場を把握する
マクロ環境は人口統計的環境、経済環境、技術環境、政治環境、社会環境などのことを指します。企業からは直接的なコントロールができず、企業に対して一方的に脅威や機会を与える要素といえます。これに対して、ミクロ環境は需要状況、顧客動向、競合動向など、企業がある程度コントロールできるものです。
ミクロ環境の分析だけでは、近視眼的な判断しかできず、エリアに特化した最適な対応ができない恐れがあります。マクロ環境を分析することにより、ニーズを踏まえた中長期的な視点によるエリアマーケティングが可能となります。
(3)生活者のライフスタイルを把握する
商圏分析では、より詳細な生活者のライフスタイルを分析します。小さなスーパーマーケットと大型スーパーマーケットが近距離にあれば、通常大型スーパーマーケットを選ぶと考えるでしょう。生活者が「まとめ買い」をする傾向が高いのであれば、大型スーパーマーケットに競争優位があります。しかし、頻繁に買い物をする層が厚い商圏であれば、買い物の時間短縮をふまえて売場面積の狭いスーパーマーケットを選びやすいかもしれません。車移動が基本になるエリアであれば、郊外型の大型ショッピングセンターに顧客が集中することもあります。こういった、生活者の買い物に関する意識や行動観察のデータを収集することで、より正確なエリアマーケティングが可能です。
(4)エリアの競合市場を分析する
対象の地域でビジネスを展開した場合、競合の数・規模はどうなのかを定量的に分析する必要があります。競合の状況を把握するためには、以下の6つを指標にしましょう。
- 店舗数
- 売り場の規模
- 立地
- 売り上げ
- 営業時間
- サービス内容
競合の状況を把握できれば、顧客のニーズが分かります。今後の店舗戦略の参考になるでしょう。
エリアマーケティングを行う理由
商圏にフォーカスしたエリアマーケティングを適切に実施することで、実店舗の「売れる仕組み」を作ることが可能になります。ここからは。エリアマーケティングを行う理由を解説します。
(1)潜在顧客がいるエリアを把握するため
エリアマーケティングで重要なことは、商圏分析によって理想的な商圏の見極めができることです。想定するターゲット層と合致する人口構成を持つ商圏に出店できれば、利益の最大化につながります。商圏人口の世帯数、年代構成、男女比、職業などを調査すれば、これまで把握できていなかった潜在顧客が存在するエリアを新たに発見することもできるでしょう。
さらに、既存店舗の商圏分析を行うことによって、商圏人口と自社顧客のミスマッチの把握も可能になります。既存店舗の分析結果を生かせば、新規店舗の出店エリアの選定がしやすくなるでしょう。既存店舗より商圏人口が多いエリアに出店する場合は、集客施策の強化や改善が必要となります。また、商圏人口の何割を顧客にするかなどの施策も立てられます。店舗の収容可能人数も考慮しましょう。
(2)需要や売上を予測するため
売り上げの向上や効率化を目指すには、そもそもの需要や、今後の売上予測が欠かせません。製品やサービスは、全国的に均一化すれば必ず売れるというものの方が少なく、ほとんどの場合は地域差・地域格差の影響を受けます。
卑近な例を挙げれば、防寒具などは寒冷地での需要は高くても、温暖な地域ではあまり売れません。消耗品はどの地域でも均等に売れると考えられがちですが、地域によって品質が高く高単価な商品が売れるケースもあれば、低価格でお得な商品が売れるケースもあります。
エリアマーケティングでは、当該地域の需要と自社店舗の売り上げを予測することが可能です。出店候補地での獲得が見込まれる需要や売上を予測する分析作業としてよく用いられるのは、「ハフモデル」と「重回帰分析」です。どちらも専門性が高い分析手法で、独自に進めるには限界がありますが、商圏分析サービスなどを提供する企業に外部依頼するのも良いでしょう。
ハフモデル
ハフモデルとは、消費者の居住地から店舗までの距離と、店舗の規模(面積)から来店確率を予測する手法です。ハフモデルでは「家から近く、売り場面積が広いほうが顧客の来店確率は高くなる」という大前提に基づいた商圏分析で、予測するには、周辺地域の類似サービスを行っている競合店などを把握しておく必要があります。
なお、ハフモデルは1960年代に米国の経営者が考案したものであるため、日本の状況に合わせた「修正ハフモデル」を1980年代に経済産業省(旧通商産業省)が紹介しています。
重回帰分析
重回帰分析とは、細かな店舗情報や競合情報など複数の要素の中から売上にどう結びついているのかを2つ以上の変数(説明変数)との相関関係を示す分析手法です。重回帰分析の用語として、「予測したい成果」を「目的変数」、「成果に関係する複数の要素」を「説明変数」と呼びます。
例でいえば、売り場面積、従業員数、商品の品揃え、最寄駅からの距離、駐車場の台数など、多くの情報をかけ合わせて、情報が持つ関係性を導き出します。この手法も、予測するには、周辺地域に対する情報の把握が欠かせません。
(3)最適な販売戦略を立てるため
出店地域を選択した後の販売戦略を立てるときにも、エリアマーケティングは役立ちます。エリアマーケティングによって、その地域に求められているものやトレンドを販売戦略に活かすことができるからです。商品を販売する際は、ターゲットに対してアプローチを行いますが、アプローチがどれほど優れた手法であっても、商品とターゲットがマッチしていなければ、売り上げの向上や効率化は目指せません。
エリアマーケティングによって顧客属性を把握できていれば、ターゲットのミスマッチは減らせます。例えば、子育て世代が多いエリアと、高齢化が進んだエリアでは戦略に大きな違いが出てきます。若年層が多いエリアの場合は、SNSを使った販促が効果的です。ただし、高齢者が多いエリアであれば、チラシ広告のようなアプローチもできるでしょう。
(4)適切な広告を打つため
エリアマーケティングを行うことで、広告の最適化が可能になります。商圏の特徴が把握できればそのエリアに最適な広告を打つことができ、集客にも繋がります。広告の手法としては、折り込みチラシの配布やポスティングWeb広告など様々な施策があります。エリアマーケティングを行うことで、商圏の人々に注目される施策は何なのか客観的に判断することができます。また、広告予算を限られた地域に集中させることで、無駄なコストをかけずに販促が行えます。
トリニティでは「スマホde販促」というアプリ内広告配信サービスを提供しています。チラシやティッシュ配りはコストも時間もかかったり、新聞折込は費用対効果が懸念されるといった経験は皆さんにもあるかと思います。スマホde販促なら初期費用0円、1クリック150円の完全成果報酬型広告です。
また、商圏×年齢×性別といったターゲット層を指定することで、店舗周辺の住居者にピンポイントで配信が出来たり、今近くにいる人にもお店の広告を表示させることができます。広告の配信先は誰もが知っているグルメや交通、SNSなどの有名アプリなので、数万箇所への露出が可能です。
エリアマーケティングの活用場面
エリアマーケティングのメリットを知って、新店舗の出店戦略や既存店舗の売上拡大に活用したいと考える方は多いでしょう。そこで、実際に活用される場面をチェックしてみましょう。確認すべきポイントと活用シーンについて詳しく解説します。
新店舗の出店時
新店舗出店時における事業の進め方を検討するために行われる商圏分析は、エリアマーケティングのひとつです。商圏分析では、一般的に以下のような項目について分析し、どのエリアに新店舗を出店するのがベストなのかを検討します。
商圏人口 | 商圏内の居住者または勤務者の属性、行動を調査する。 エリア内に自社のターゲット層がどのくらい存在しているかを把握する。 |
周辺環境 | 周辺の店や施設の把握や道路に何が面しているかなどの周辺環境を調査する。 |
競合状況 | 該当エリアの競合店舗の立地・売り場面積・品揃え・顧客獲得状況、販促方法などを調査する。 |
商圏分析によって、十分な需要や売上見込みがありそうだと判断できたら出店計画へと進みます。しかし、出店にあたり課題がある場合は、課題を解決する方法を考えなければなりません。課題解決が困難な場合は、そのエリアの出店を諦め、他エリアへの出店を再度検討する必要があります。
エリアを限定したプロモーション活動
エリアマーケティングは、新店舗出店時のみだけではなく、プロモーション活動においても活用できます。プロモーション活動では、地域特性は大きな影響をもたらします。無駄な販促費用を生まないためにも、効果的なアプローチを行うことが大切です。以下のような方法で、調査を行います。
チラシ配り | ・店舗へのアクセスが可能な場所の分析 ・来店してくれそうな客層(自社のターゲット層)の分析 |
折込チラシ | ・ファミリー層の多い戸建て、一人暮らし向けのマンションなどターゲットを絞る ・ターゲットに刺さるキャッチコピーやデザインを考える |
屋外広告 | ・駅や街中のスペースにポスターや看板などの広告を掲載する場合は、ターゲット層の目に留まりやすいエリアを絞って設置する |
交通広告 | ・電車やバス内のステッカー・中吊りポスターなどは該当エリアから離れすぎないかを調査する ・デジタルモニターなどに広告を掲載する場合は、乗客層(ビジネスパーソン・学生など・高齢者など)の利用時間に該当しているかを調査する |
エリアマーケティングを成功に導く4つのステップ
ここからは、具体的にどのように進めていけば良いのか、エリアマーケティングの手順について詳しく解説していきます。
(1)エリア候補のリストアップ
エリアマーケティングを実施するうえで、成果を出せるかどうかは重要です。失敗の確率を下げるためにも、商圏分析は複数のエリア候補で実施します。複数候補の中から、より自社の事業に最適なエリアを決定していくのが一般的なやり方です。
まずは、事業戦略に合わせて、エリア候補をいくつかリストアップしていきます。店舗に足を運びやすい商圏エリアであるということを前提として、「住宅街」「駅前」「繁華街」「ロードサイド」「学校が多いか」など、事業に合った候補地の中から販促を強化していきたい地域を絞っていきます。
その際は、自社店舗にアクセスできる範囲はどのくらいなのか、競合は多くなってしまわないのか、競合に対抗できる強みはあるのかなど、自社戦略に合わせて候補地を絞り込んでいくことが大切です。結果的に競合が強いエリアだと分かった場合は、高い効果を見込みにくいため、候補から外すことも検討せねばならないでしょう。
(2)エリアのデータを収集
リストアップしたエリアで、生活・勤務・行き来する人たちのデータや地域情報を収集します。データ収集には以下のような方法があります。
- 統計調査
国勢調査、商業統計、住民基本台帳人口移動報告、家計消費状況調査など公的な統計資料を活用する方法です。 - 街頭調査
通行している人に声をかけて街頭調査を行い、属性や行動などのデータを収集します。性別・年代・学生か社会人かなどをおおよその見た目で判断し、声をかけずに属性データを集めることもあります。 - 競合店調査
競合店の立地・売り場面積・品揃え・顧客獲得状況、販促方法などを調査します。 - 交通事情と商圏バリア
候補物件に到着するまでの交通事情や商圏バリアとなるものを調査することも大切です。商圏バリアとは、顧客が店舗に来店するまでに障害となり得る可能性があるものを指します。例えば、徒歩で渡れない幹線道路や河川がある場合や渡りづらい橋や道路が候補物件の近くにあると、店舗に行きづらいため来店見込みが低くなります。
また、店舗に広い駐車場があっても、狭い道や交通事情が悪い道を通らなければ辿り着けない場合は、車での来店は難しいでしょう。誘引力が高い競合店や商業施設も商圏バリアとなります。 - 民間企業からの情報入手
事業戦略に合わせて目的に応じた情報を企業から入手するという方法もあります。例えば、携帯電話会社では、ユーザーの位置情報などのデータを持っており、人流を把握することが可能です。電車やバスなどの公共交通機関などは、乗客属性などのデータを持っています。
(3)エリアの見極め
エリアをリストアップし、データを収集したら、そのエリアで自社の強みを存分に活かせるのか、該当エリアで自社にどのくらい需要があるか、どのくらいの売り上げが見込めそうなのかを分析していきます。いくら魅力的な候補地や物件が見つかっても、自社の事業やターゲットにマッチしていなければ成果は出せません。
(4)コストを精査する
エリアを見極める段階まで終わったら、コストを精査します。理想的なエリアや物件が見つかっても、賃料や広告費用がかかりすぎては利益は見込めません。コストをしっかり精査し、利益をしっかり出せるエリアであることを見極めることが大切です。
まとめ
エリアマーケティングの内容や戦略をはじめ、メリットや活用場面、方法・手順について詳しく解説しました。エリアマーケティングに欠かせない商圏分析などについてもご紹介したので、新規出店やエリアを限定したプロモーション活動など、自社の業績向上のために役立ててください。